仙塩ひと・しごと図鑑

【ゲームクリエイター・大学生】落合凌空さん

今回、話を伺ったのは、ゲームクリエイターとして活動している大学生の落合凌空さん。

大学生、バイト、そしてゲームクリエイターという「三足の草鞋」を履きながらも前に進み続けているその原動力は何か。

ゲームクリエイターとはどういう仕事で、なぜその夢を持ち、どうして頑張れるのか。

そのあたりの詳しい内容をじっくりと聞いてきました。

 

―そもそもゲームクリエイターとはどんな仕事?

落合凌空さん:ゲームクリエイターと言ってもたくさんの仕事がありまして、絵を描いたり、3Dのモデリングをするグラフィッカーさん、ゲームの物語を作るシナリオライター、ゲームの音楽を作るサウンドクリエイターさんがいます。

その上に制作進行を管理するディレクターさんがいて、ゲームの企画を作る大本のプロデューサーがいます。こうした方々をゲームクリエイターと総称して呼ぶことが多いです。

その中で私は企画とシナリオライターをやっています。

 

―ひとつのゲームができるまでにどんな形で進んでいくのですか?

まずはどういうゲームを作りたいかという企画書を作ります。企画が出来たら誰が何をやるのかという役割を決めます。

その後ディレクターの指示のもとに各クリエイターが制作を続けていって、出来上がったものをスクリプターと言ってゲームを1つにまとめるスクリプトをしてくださる方々にお願いして作品として完成します。

 

―「こういうゲームを作ろう!」というアイデアはどうやって得ていますか?

自分は夜の方がアイデアを得やすいので夜に散歩して、歩いている中で出たアイデアをすぐにメモ帳に書き出してアイデアを得ています。あとは同じクリエイター同士の雑談の中から刺激を受けてアイデアが湧きだすことがあるので、そういった中からアイデアを得ることも多いです。

主に私が参加しているのはインターネット上にクリエイターが集まるコミュニティで、ボイスチャットを使って10~20人が土曜日に集まって雑談や情報交換をおこなっています。

そこに参加している人は宮城県の人が多いですね。オタクと言えば秋葉原ですが、仙台も秋葉に次ぐオタクの街だと思っています。

仙台にもゲームクリエイターやアニメの絵を描く人は多いと感じています。イベントに顔を出すときも、「私仙台なんです」「私も宮城なんです」って声をかけてくれる方も多いんですよね。

昔はゲームの舞台が仙台だったり開発が仙台ということが多かったので、仙台に来てクリエイターをやるという方が多くいた影響だと思います。

今は減ってしまったのですが、ゲーム会社の本部を仙台でやっている人が多かったのです。

あのファミ通も仙台にあった

 

―ゲームクリエイターになりたいと思ったきっかけは?

少し重い話になるのですが、自分は持病があり、過保護に育てられてきた過去があって、人と話すことをしてきませんでした。その為コミュニケーションが取れなくていじめにあったりして苦しんだ時期がありました。

その当時は、ゲームを逃げるようにプレイしたのですが、偶然とある同人ゲームに出会い、背中を押されたことがきっかけでした。

そのゲームには「立ち止まっていても変わらない。前に進まなきゃ自分は成長できない」というメッセージがあり、自分は「立ち止まっていちゃだめだな、自分は行動していかなきゃだめだな」と言葉に背中を押されて自分と向き合うようになっていきました。

その時に感じたのが「ゲームは誰かの背中を押す力がある。素晴らしいコンテンツなんだ」ということ。

「自分も誰かの背中を押せるような作品を作りたい」と思うようになり、ゲームクリエイターを目指すようになりました。

もしそのゲームがなかったら大学生になっていなかった、学校にも通えなかったかもしれません。

ゲームに逃げることができたので、心が休まる瞬間があったのだと思いますし、それがなかったら想像できないくらいの精神的な負担があったんじゃないかと今では思っています。

 

―香川県のゲームに関する条例についてはどう思いますか?

良いところもあれば悪いところもあると考えています。

日本はゲーム依存症について対応が遅れていることが指摘されていますが、それを理由に時間制限を掛けるのは少し意味合いが変わってくると考えています。時間制限の悪いところは「自分でゲームを辞める」ということを通して自己抑止力を身につけられなくなるということです。

自主的にゲームをやめる癖、自分で時間を決めてやる力は“自分から“止めることに意味があって、法や条例で強制的に止めるのは意味がないと思います。

あとこの条例で「ゲームは悪いもの」というイメージがつくのではないかと感じています。
実際に海外に目を向けるとゲームが教育に使われていたりしていますし、要はやり方の問題だと思っています。

今あげた点については疑問を感じますが、国や自治体としてゲーム依存症に取り組む姿勢は良い傾向だと感じています。

 

―ゲーム依存症はどうしてなると思いますか?

理由は二つあると思っていて、ひとつはゲームをする上で得られる快感、いわゆるドーパミンによる中毒性によって起こるものと、ストレスや精神的な理由からくるものです。

自分は後者の理由でゲーム依存症に陥りかけたこともありました。問題があってゲームに逃げるというのは現代において主流になってきています。

海外ではカウンセラーが一緒にゲームをしながらカウンセリングをすることもあります。一緒にプレイして話を聞いていく、という話も耳にしています。

 

―今までの話も合わせて、どういうゲームを作りたいのですか?

自分は今ノベルゲームというジャンルで制作をしていて、特に物語が重要になってくるジャンルです。

自分がどういうメッセージを作品に込めたいかというのをまず大事にして、例えば自分のきっかけになった作品の「前に進むことの大切さ」を作品に込めたいのであれば、青春群像劇にして、それを伝える物語を紡いで作品を形作っていきます。

どういうスタイルのゲームかと言うと、あえて昔のものを揚げるとときメモのようなものです。恋愛要素はないのですが、そういうスタイルで進んでいくゲームです。選択肢で変わってくるような。。。

昔ゲーマーだった人は弟切草とかかまいたちの夜をプレイしたことがある人もいるかもしれませんね。

昔との違いは、モーションがついたり、選択肢でポイントがたまり、分岐したりしていきます。昔よりも細かいことができるようになりました。

またノベルゲームはコストが掛からないので作りやすいのが特徴です。自分の関わっている同人ゲームの業界ではノベルゲームが主流になっています。

ちなみに今作っている作品は、学生の青春群像劇と音楽を掛け合わせたものです。

 

―ゲームを作る上でのこだわりはありますか?

必ず想いを作品にのせることですかね。

私のこだわりは「想いを乗せて届けること」です。

作品にどういうメッセージを載せるか、しっかりと考えて作っています。

 

ー登場人物の掘り下げはどうやっているのですか?

架空の人物を作らないようにしています。

登場人物にはある程度モデルを作っています。その人のことを良く知った上で、設定が深いキャラクターができるようにしています。

例えば私なら「いじめにあっている人の気持ち」なら分かる。とかとか。

だから、100%のモデルはいませんが、経験やモデルから特徴を作り、登場人物に反映させています。

 

―ゲームを作る難しさはありますか?

私の場合は士気を維持させることですかね。

サークルとしては大規模になったのですが、一人一人に目を向ける難しさがあります。

一人一人を理解して最適な仕事を与えたり、その人の得意なことを理解したうえでやってもらうとか。一対一なら良いのですが、人が増えていくと難しいんだなと。

ゲーム制作って、人が少ないと自分が苦手なこともやらないといけないので、楽しいことって自分が得意な作業をしている1割2割程度なんです。他8割はやりたくない作業だったり苦しいというのが現実。

でも気持ち的な意味で楽しく作るのが一番大切。やりたくないこと、苦手なことをやらせるわけにはいかないと自分の経験から考えています。

私は以前、少人数のサークルに所属していて、やりたくない事をたくさん振られたせいでメンバーのモチベーションが保てずサークルが空中分解していった過去があります。

同人ゲーム業界ではよくある話ですが、長い制作期間があり、実感を感じるのが難しいゲーム制作はモチベーションの維持は非常に大事になっていきます。

 

ーチームで制作するときみんなのモチベーションはどう保っているのでしょうか?

やりたくないこと・苦手なことはやらせない。

あとは「これはいい作品だから絶対完成させたい」という思いを目覚めさせること。

どんなに悪い企画でもモチベーションさえあれば一応完成します。ですがほとんどの場合途中で挫折すると思います。

逆に良い企画だとモチベーションは下がりにくくなりますし、完成に近づきやすいです。
だからこそ出来る限り良い企画を出して、モチベーションを保つことを大事にしています。
良い企画というのは面白いモノということではなく自分の口で説明して、相手に80%以上面白さや良さを理解してもらえるもの。だと私は考えています。

どんなに良い企画を作ってもちゃんと伝わっていないと相手はその良さが分かりません。
高校時代にディベートをやっていたので私は嫌ほどそれを感じてきました。

モチベーションは、「企画」が一番鍵を握るものだと私は考えています。

やっぱり面白い作品はやる気が出ますから!

 

ー今作っているゲームはどういう人にやってもらいたいですか?

何かやりたいけど前に進めなかったり、何かを抱えて生きている人にプレイしてもらいたいです。

あまり作品のことは言えないのですが、登場人物の中には身体にハンデを持っているキャラクターがいて、そういうキャラクターがどうやって前に進んでくのかというのも見どころになってくると思います。

自分に置き換えてというか、感情移入していける作品になると思うので、「何かを変えたい」と思っている人にぜひプレイしてほしいと思っています。

 

ー先ほどはゲームを作っていく難しさについて聞きましたが、今度は楽しさについて教えてください。

ゲームはチームで制作を行い、ひとつ何かできる度に、ビデオ通話を使って話をしたりします。

その中でだんだん距離が縮まってひとつになっていくのが実感できるのですが、その瞬間がすごくうれしくて、ああよかったなと思うと同時に、この気持ちのまま走り切りたいという思いがわいてきます。

仲間と距離が縮んだ時が、作っていて一番楽しいです。

ゲームはみんなで作るというイメージがあると思うのですが、作業自体は個人の作業が多くて、ひとりでいる時間が多い。

制作が進むにつれてチームで話し合うことってだんだん減っていくのですが、進捗が1つあるたびに作品が形になっていき、だんだん団結力が生まれていって・・・その感覚が気持ちよくて、ゲームを作っていて良かったなと感じますね。

みんなバラバラで作っていたものがゲームとして一つになる瞬間がとても嬉しいです。

ー1日ゲームの為にどれくらい時間を掛けているのですか?

毎日3時間くらいです。

これはシナリオをかくことやサークルとしての仕事も入っていて、作業時間が増えてしまいますね。

 

ー大学生でありながらバイトもして毎日3時間も仕事をしていると、息抜きの時間はあるのでしょうか?

息抜き・・・息抜きは・・・そうですね・・・常に息抜きしている感覚なんですよね。

最初は人と話すことが苦手だったのですけど、人と話すことが好きになってきて・・・。作業しながら誰かと話すとそれが息抜きになっていたりします。ゲーム制作自体が1つの息抜きになっています。

 

ー自分もゲームはするのですか?

もちろんやっています!オールジャンルでやりますが、スポーツゲームやRPGが好きです。

でも一度没頭しちゃうと作品作るのを忘れてしまって、「しまった、やっていなかった!」となることがあります。

息抜きもゲームだったりするので、「人生そのものがゲームじゃないですか!」と言われたりしますね。

 

ー1日のスケジュールはどんな感じですか?

平日は大学の講義を受けて、夕方くらいに終わります。

その後バイトがある日はバイトに行って、夜の8時から9時くらいから作業をして、11時になって寝る、みたいな感じです。

今は飲食店でバイトしていますが、もっと稼げるようになったら出来る限りバイトを辞めてゲーム制作に時間を使いたいですね。

ちなみに基本的に土日はずっとゲームを作っています。

あとはシナリオを書くために色んなゲームをしてフレーズを集めたり研究をしています。

その延長線で映画とかアニメも見ています。

良く特殊だと言われるのですが、脚本の文字起こしをしたりもします。

例えばドラマだったら、今どの登場人物が移動して、どういう手ぶりで、どういうセリフを言う、みたいなのを脚本として起こして、どういう演出をしているのかと見ています。

最近見たのは今ドラマでやっている半沢直樹です。結構動きあるな。面白いなーと見ています。舌を噛むシーンとか。

そういうことをしているので他の人の台本を読んだだけで頭の中で映像が再生できるようになるのですごく役立ちます。

こういう力は時間を掛けないと得られないスキルなので、大学生からゲーム作りを始める、自分自身高校2年から始めたのですが、スキルトレーニングは早いうちから始めるのがおすすめです。

グラフィッカーは中学生から初めて高校生でデビューした人もいます。昔では考えられない速さでどんどん若い人がクリエイターとしてデビューしていくのが現状です。なので今の時代だからこそクリエイターになりたいと思ったら思い立ったらすぐにやってみて、というのが強いです。

そういう意味でもやっぱり大学生って始めやすいです。チャレンジ精神を持って頑張るのも悪くないなと思います。

ーチームの代表として、こういう人と仕事をしたいってありますか?

1人でゲームをつくることと、みんなでゲームを作ることは全く別物だと分かっている人ですね。

例えば、自分が面接官だったら、ゲームを仲間と創ったことがあるかどうか聞くと思います。

というのも、「1人でゲームを作ってます」「絵を書いたことがあります」「絵がうまいです」はゲームを作ったことにはならないからです。

ゲームは基本複数人で行う協力作業です。

ゲーム制作の現場で、それぞれがどういった手順でゲームを作るのかというのをちゃんと知っている人じゃないと取れません。

どんなにすばらしい絵を書いても、どんなにすごい物語を書いても、ゲームの製作の流れが分からない人は全然ダメなので。

コミュニケーション能力はゲーム制作においてとても重要だと考えています。

今自分も落ち着いてきたので、グラフィッカーさんでゲームクリエイターになりたいという人と二人三脚で(ゲームを)一本作ってみようと、自分が企画と物語のお手伝いをする感じで進めています。

学生から始めたいという人が結構多くて、そういう人たちに自分の知識やスキルが役に立てばいいなって。

例えば二人三脚でやってその人がプロになれば自分にもつながりが生まれて武器になるので。

もし学生さんやゲーム制作に興味がある方でゲームと作りたいと思っている人がいたらぜひTwitterでもメールでも声を掛けてほしいです。

 

まとめ

話を聞いていて思ったのは、きっかけになったゲームに出会って、ゲームの仕事をして、いろいろな人と仕事をして、コミュニケーションをしていく。そういう話を聞いて、ゲームが持つ可能性を見させてもらった。

いじめにあっていた過去。その時にたまたまやっていたゲームと出会ったことで、「前を向いて歩くのも良いかな」と思えるようになった。それが今作っているゲームで「届けたい想い」になっている。そこが原点になっている。

落合凌空さんの人生を感じさせてもらったインタビューになった。

ぜひ、完成したら彼の作ったゲームにも触れてみたい。

(執筆: 鈴木)

ひと:落合 凌空さん
しごと:ゲームクリエイター
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